廻文詩,廻文体ともいう。中国詩の一体。初めから順に読んでも詩になり,末から逆に読んでもまた別の詩になる形にしたてたものを普通にはいう。斉(479‐502)の王融の〈春遊廻文詩〉(五言八句),〈後園作廻文詩〉(五言四句)が有名。《本朝文粋》巻一には橘在列の〈廻文詩〉(五言八句)が載せられているが,日本人も時にこうした漢詩を工夫するところがあった。なお日本では,回文歌や回文狂歌も工夫したが,この場合は初めから読んでも逆から読んでも同じ歌になるという形のもので,回文詩の形とは異なる。
ここで中国宋の詩人蘇軾の回文を一つ紹介しよう。
題金山寺回文体
蘇東坡題金山寺回文体
潮随暗浪雪山傾。 潮は暗浪に随い雪山傾く
遠浦漁船釣月明。 遠浦 漁船 月明を釣る
橋対寺門松逕小。 橋は寺門に対し松逕小なり
檻當泉眼石波清。 檻は泉眼に當り石波清し
迢迢緑樹江天暁。 迢迢たる緑樹 江天の暁
靄靄紅霞晩日晴。 靄靄たる紅霞 晩日晴る
遥望四辺雲接水。 遥に望む四辺 雲 水に接し
碧峰千点数鴎軽。 碧峰千点 数鴎軽し
これを逆読すると
軽鴎数点千峰碧。 軽鴎 数点 千峰碧なり
水接雲辺四望遥。 水は雲辺に接し四望遥なり
晴日晩霞紅靄靄。 晴日 晩霞 紅 靄靄たり
暁天江樹緑迢迢。 暁天の江樹 緑 迢迢たり
清波石眼泉當檻。 清波 石眼 泉 檻に當る
小逕松門寺対橋。 小逕 松門 寺 橋に対す
明月釣船漁浦遠。 明月 釣船 漁浦 遠し
傾山雪浪暗随潮。 山に傾く雪浪 暗に潮に随う
心にゆとりがある時、愛でるのも一興ですね。
(出処)
http://www.ccv.ne.jp/home/tohou/siwa26.htm
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